第40回Think-in:2024年12月16日

 テーマ:「食料安全保障、脱炭素の時代における地域資源活用型地方創生について」
   ゲスト:末松広行 東京農業大学総合研究所特命教授(元農林水産事務次官)

医食同源という言葉がありますが、我々の健康を守っていく上で、医療と同じように食は極めて重要です。農業や食品産業は医療と異なり非営利産業ではありませんが、単に経済原理に基づく付加価値の産出にとどまらず、市場では計れない価値を生み出している産業でもあります。末松教授のお話の中には、医療や介護の世界にも通じる多くの示唆があったように思います。

39回の松原教授のお話にもあったように、営利・非営利を通じて組織経営・マネジメントという意味で求められることは本質的に同じであり、それぞれの組織形態にふさわしい「哲学とマネジメント」が重要であることを、産業全体の社会的意義というマクロの視点からも学ことができたのではないかと思います。


 

第39回Think-in:2024年11月15日

 テーマ:「医療福祉事業における哲学とマネジメント」
   ゲスト:松原由美 早稲田大学人間科学学術院教授

 非営利法人である社会福祉法人や医療法人は、その非営利性を意識するあまり、経営・組織・人事のマネジメントという視点が弱いことがかねてから指摘されてきました。私自身、大学院(MBA)で 医療介護マネジメントについて講義を行う中で同様の感想を持っています。

 しかしながら、営利法人でも非営利法人でも、さらに言えば中央省庁でも地方自治体でも、組織経営・マネジメントという意味で求められることは本質的に同じであり、それぞれの組織形態にふさわしい「哲学とマネジメント」が重要であることを改めて学ことができたのではないかと思います。



第38回 Think-in:2024年10月30日

 テーマ:「認知症に配慮したデザインの紹介」
  ゲスト:英国スターリング大学 環境・認知症・高齢化センター

          レスリー・パーマー教授(高齢化・認知症デザイン分野;建築家)


 建物の構造、色彩、素材、床(絨毯)や家具、音響など、居住環境が高齢者、特に認知症高齢者のケアに与える影響は非常に大きいものがあります。

 日本でも介護保険創設後、認知症グループホームの設置基準や新型特養(個室ユニット型施設)の創設に当たって、京都大学建築学科の故外山義教授を中心とするグループが極めて先進的な実践を行い、様々な発信をされていたことを思い出します。

 パーマー教授のわかりやすいプレゼンで、居住空間、設えの持つケア力を改めて認識することができたと思います。



第37回 Think-in:2024年8月30日

    テーマ:「グループプラクティス診療所が地域医療の鍵となるためには?〜働き方や経営も踏まえて〜
    ゲスト:大橋博樹 医療法人社団 家族の森 多摩ファミリークリニック院長
           日本プライマリ・ケア連合学会副理事長


 ソロプラクティス中心の日本の診療所にあって、日本ではまだ数が少ないグループプラクティスですが、今回の大橋院長のお話を通じて、機能面、経営面、そして医師としてのやりがい、自己実現という意味でも、診療所の可能性を大きく広げる実践の形であることが理解できたのではないかと思います。

 大橋先生のわかりやすく親しみやすいお話しぶりと優しいお人柄にもとても感銘を受けました。会場全体が温かく盛り上がりました。

    


第36回 Think-in:2024年6月6日

  テーマ:「法人連携と社会福祉法人経営について~地域を支え、人が集まる職場を目指して~」
  ゲスト:山田尋志 社会福祉連携推進法人リガーレ 代表理事

 地域福祉の現場での長い実践経験をベースに、法人経営のみならず地域課題の解決に向けて強いリーダーシップを発揮され、常に先駆的な取り組みを実践してこられた山田代表のお話はとても刺激的で新鮮なものだったと思います。

 地域包括ケアネットワークや地域共生社会に自分たちがどういう形でコミットするのか(できるのか)、会員各位の実践の方向を考える上で非常に参考になったことと思います。



第35回 Think-in:2024年4月25日

  テーマ:「少子化と子ども罰-人口戦略に求められるもの」
  ゲスト:前田正子 甲南大学マネジメント創造学部教授(元横浜市副市長)

 当日の議論でもありましたが、この問題は政府が「出生率目標」を掲げて政策を遂行する、というようなものでは決してありません。結婚すること、家庭を持ち子供を持つことは人々の「権利」「希望」「意思」なのであって、決して「義務」や「規範」ではないのです。

 人々が自身の希望する生き方を選択することができる社会や制度を作ること、それがなければどこかに歪みが生まれます。今その歪みは、人々が結婚しない(できない)、子供が生まれない(産めない)、という形で現出している、ということなのではないでしょうか。その根底にある課題を一つ一つ取り除いていくことなしに、将来を変えることはできないでしょう。

 前田先生はとても明るくチャーミングな方なので、お話はとても楽しく聞くことができましたが、語られている内容はとても重く厳しいものでした。



第34回 Think-in:2024年3月6日

  テーマ:「米中関係と台湾

ゲスト:兼原信克 同志社大学特別客員教授/笹川平和財団常務理事

        (元内閣官房副長官補・国家安全保障局(NSC)次長)


 今回は東アジアの安全保障という視点から、米中関係とその中心にある台湾問題について、歴史的な視点も交えて議論しました。もちろん、この話は「米中」「台湾」の問題だけではありません。日本も直接の当事者として向き合わなければならない多くの論点を含んでいます。

 討論の中でも発言しましたが、今、世界の枠組みを支えてきた様々な価値観が大きく揺らいでいます。国家間の関係のあり方や統治のあり方、端的に言えば「自由と民主主義」が大きな挑戦を受けています。

 そんな中で、私たちはどう立ち振る舞うのか。日本の進む道、この国のあり方をどう考えるのか、という問いを考える上で、単に自国の中だけでなく、極東、アジア太平洋、さらには世界の中での日本の立ち位置をも視野に入れなければ、物事が見えてこない、ということだと思います。

 同時に、歴史、という視点で今日を見る、ということも重要です。「歴史は繰り返す」とも言います。不安定・不透明な時代の中で、私たちは再び過去の過ちを繰り返してしまうのか。

 

 1948年、日本国憲法施行の翌年に、当時の文部省が作成した中高生向けの教科書があります。

 その名も「民主主義」。文庫本でも手に入ります。ぜひ一度お読みください。


  

第33回 Think-in:2024年2月6日

  テーマ:「英・独・仏のコロナ対応とかかりつけ医~日本医師会欧州医療調査の概要報告~
  ゲスト:森井大一 日本医師会総合政策研究機構 主席研究員

 今回は第3回拡大Think-inに引き続き、日本の医療提供体制について議論しました。

 パンデミックという未曾有の経験の総括という視点から、欧州3国のパンデミック対応について議論し、英仏独それぞれの対応の違い、日本との対比、そしてそこから見て取れる日本の医療提供体制の課題について議論しましたが、森井研究員のプレゼンは現地調査で得られた知見・客観的データとファクトに基づいた詳細かつロジカルな内容で、情報の豊富さと同時に非常に説得力のあるものでした。

 迫井対策官のプレゼンと合わせて考えることで、パンデミックを通じて顕在化した日本の医療提供体制の課題をいかに解決していくか、多くの示唆が得られたように思います。



第32回 Think-in:2023年12月14日

  テーマ:「「超連携」を活かしたコロナ禍での挑戦、そして未来へ
        ~情熱が突き動かす志の「KISA2隊」が地域のためにできること~」
  ゲスト:小林 正宣 KISA2隊大阪 隊長(医療法人葛西医院院長)

 今回は久々の会場開催で、ゲストの小林隊長の熱意あふれるプレゼンに刺激されてか、会場での質疑が盛り上がりました。
 KISA2隊という命名、「サークルのような」とご本人も話される軽やかなフットワーク、そしてあふれ出るような若い情熱に圧倒されましたが、活動は綿密に組み立てられ、先の読めないパンデミックの進行の中で、時々の状況の変化に対応しながらチーム・ネットワーク・多職種・多機関連携を着実に組み立て、活動の輪を広げてこられたことに、深く感銘を受けました。
 同時に、会場参加者から「KISA2隊の英雄的活動は本当に素晴らしいが、本来ならKISA2隊のような組織が生まれることなく、日常の医療活動の中で当たり前に実践されなければならなかったもの」という指摘がありました。 
 これからの日本の医療のあり方を考えていく上で、幾つもの示唆を与えてくれるプレゼンだったと思います。

 

第31回 Think-in:2023年10月31日

  テーマ:「セル看護提供方式とは 「大変さ」を「やりがい」に ~勤務時間内に最高のパフォーマンスを上げる仕組み~
  ゲスト:須藤久美子 飯塚病院前看護部長

 今回はリモート発信によるゲストプレゼンでしたが、いつもにも増して質疑が盛り上がりました。
 ポリファーマシーの取り組みを、薬剤師だけでなく、病棟医師を含む他職種によるカンファを通じて実践することで、その実効を上げていることがよく理解できたと思います。単に「減薬」だけを目標にするのではなく、服薬に関する患者さんのアドヒランス向上を実現する取り組みでもあるように思いました。



当日の様子と配付資料・参考資料は会員向けフォルダー(「臥龍Think-in」)に収納されています。


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